Ambergris
傷から生まれた、鎧の話をします。
Facts
龍涎香(りゅうぜんこう)を持つマッコウクジラは、およそ100頭に1頭。
体の内側にできた、消化できないイカのくちばし——いわば内側の傷を、
クジラが自分の油で包んで固めた塊が、海に還り、
30年、ときには100年、波と太陽の中を漂って、
えも言われぬ香りに変わります。
かつて中国の皇帝・嘉靖帝は、龍涎香百斤(約60kg)を求める勅令を出し、
十年あまり探させても手に入らなかったと、正史に残っています。
当時の取引記録では、銀の75倍——金に換算すれば、およそ10倍の値がつきました。
昔も今も、望んで手に入るものではない。
海が、渡す相手を選ぶような素材です。
Black, Brown, White
龍涎香には、海の上で過ごした時間によって呼び名があります。
ブラック——生まれたばかり。熟成はまだ浅い龍涎香
ブラウン——およそ30年。野生みと、力のある香り
ホワイト——100年以上、海の上を渡り、洗練された香り。1000年前のものもある。龍涎香全体の5%という希少さ
黒から白へ。波と太陽の中で、少しずつ浄化されていきます。
代表・吉田は調香でも、この違いを生かしています。
ブラウンは、現実を生きる力の側に。
ホワイトは、浄化と、自分を超えた大きな循環の側に。
Armor
昔、クジラの口は「冥界の門」、お腹の中は「地獄の底」と呼ばれました。
地獄の底とは、生まれる前の魂の世界のこと。
龍涎香は、マッコウクジラが体の内側の傷を、
自分の油で包んで固めた、守りの塊。
30年、ときには100年かけてできる、
原初の傷から生まれた、鎧です。
クジラの鎧と、人の鎧——同じことが、現れている。
性格。世界の見方。思い込み。
生まれる前後の、いちばん古い痛みから自分を守るためにつくった鎧。
鎧は、痛みから守ってくれるかわりに、枠をつくる。
新しい世界のことを、感じられなくする。
鎧が、静かに溶けて、
新しい世界が、ひらいていく——
龍涎香は、そういう物質。
— 吉田恭隆(バリバリー代表・龍涎香鑑定士)
A New World
10年以上この素材と向き合ってきて、いまだに不思議なことがあります。
龍涎香の香りには、嫌いだという人が、ほとんどいない。
好みが真っ二つに分かれるのが当たり前の香りの世界で、これは異常なことです。
人それぞれの好みよりも根源的な部分——
つまり、鎧の内側に触れているからではないか、と考えています。
頭と心が静かになり、
新しい体験をしたときの解釈が変わっていく。
解釈が変わるということは、自分が見ている世界が、まるで変わってしまう。
吉田はそれを、新しい世界を連れてくる香り、と呼んでいます。
漢方で龍涎香は「百病を治す霊薬」と書かれました。
一つひとつの病気に効く、という意味ではなく——
人の根っこの固まりがゆるむと、全体が変わる。
そういう意味だったのではないかと、私たちは受け取っています。
※医薬品ではありません。効果・効能をうたうものではありません。
Composition
龍涎香は「えも言われぬ香り」——言葉にしづらく、意識にあまり上がりません。
だからこそ無意識のところで働いて、他の香り全体を底上げする。
世界中の調香師が、申し合わせたわけでもないのに
ベースに龍涎香を入れてきたのは、これではないかと考えています。
Senses
効果がある、という言い方は適切ではないかもしれません。
ただ、すごい気づきをもたらしてくれやすい物質だと感じています。
香りに触れた場で、よく起きることがあります。
※感じ方には個人差があります。
Encounter
宝物のような香料は、探して手に入るものではなく、
本当に、タイミングで出会うもの。
代表・吉田が龍涎香と出会ったのは、2015年頃。
250種類の植物を非加熱で漬け込んでいた、工房の時代でした。
香水を学んだ人なら誰もが知っている、幻の香料。
昔から使われてきたのに、今では、誰も嗅いだことのない。
えも言われぬ香りがする——
そんな話に、惹かれていきました。
週に数回、試作品や龍涎香を持って海へいき、
水平線を見つめながら、質感を探り続けました。
その日々が、やがて「日本で龍涎香を探そう」へと続いていきます。
吉田は、吉田のタイミングで、龍涎香と出会いました。
いまここで龍涎香を知って、どこか惹かれているとしたら——
あなたのタイミングも、来ているのかもしれません。
Our Ambergris
バリバリーで使う龍涎香は、代表・吉田恭隆が自ら鑑定したものだけです。
扱うのは、海岸に漂着したものだけ。
捕鯨由来の龍涎香は扱いません。
吉田は日本で9件の龍涎香発見に関わり、
鑑定・研究・普及活動を続けています。
FAQ
マッコウクジラの体内で生まれ、海を30〜100年以上漂って熟成される天然香料です。龍涎香を持つクジラはおよそ100頭に1頭。古くから「幻の香料」と呼ばれてきました。
「えも言われぬ香り」としか言いようのない、言葉にしづらい香りです。不思議なことに、嫌いだという人がほとんどいません。強く主張せず、他の香り全体を底上げするように働きます。
バリバリーで扱う龍涎香は、海岸に漂着したものだけです。捕鯨由来のものは扱いません。鑑定は代表・吉田恭隆(アンバーグリスジャパン)が行っています。
医薬品ではないため、効果・効能をうたうものではありません。頭が静かになる、体がゆるむ、といった体験の声を大切にしながら、「新しい世界を連れてくる香り」としてお届けしています。
見分け方の動画や無料鑑定の窓口を、龍涎香の普及団体アンバーグリスジャパンが用意しています。拾った石が気になる方はそちらへご相談ください。
海の上で過ごした時間の違いです。ブラウンはおよそ30年もので、野生みのある力強い香り。ホワイトは100年以上海を渡ったもので——なかには1000年前のものも——龍涎香全体の約5%しかない希少なグレードです。黒から白へ、時間をかけて浄化されるように変化していきます。
MAIL LETTER
龍涎香の物語の続きは、お便りでも綴っています。
二十四節気の過ごし方、植物の声、香りの使い方。
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