Natural Perfume Guide

天然香水とは。
素材だけではなく、つくり方まで選ぶ香り。

自然の香りは、名前だけではわかりません。

どこで育ち、いつ摘まれ、どう香りを取り出し、何と出会い、どんな時間を過ごして、一本の香水になったのか。「天然」という言葉の奥にあるものを知ると、香りの選び方は、少し変わります。

From the Maker

世界の息吹を、そのまま詰め込んだもの。

私の原点は、身体が動かなくなったところから、植物や、世界のさまざまな存在に助けられて、もう一度身体が動いた、という経験にあります。

だから、私の捉えている天然香水は、天然素材を使っているから天然、というだけではありません。世界の息吹をそのまま詰め込んだものが、天然香水だと思っています。

「インスパイア(inspire)」の語源は、ラテン語の「in-(中へ)」と「spirare(息、息吹)」を合わせた言葉で、「中に息を吹き込む」という意味を持ちます。

私は普段、動けないときは動けません。それでも、毎年、蓮の花が咲く時期に滋賀の産地へ伺い、摘みたての花に触れる。この時は、身体が動く。自分の内側に、息吹が流れ込んでくる。リベレーションブランド バリバリーの活動は、この感動から始まっています。

だから、素材は旬のものをいただきます。旬のタイミングが来たとき、そこに宿っているのは、栄養素のような目に見えるものだけではありません。目に見えていないのに、力を与えてくれる何か。透明な息吹とでもいうような何かが、来ている。それを大切に慈しみながら、5〜38度の生命の温度帯で香りを受け取っています。素材の向こうにいる、育てる人との時間も、同じように大切にしています。そんな、香りの成分のことだけを考えた時には浮かんでこない要素が、大切な働きをしていると思っています。

Direct Answer

まず、いちばん短い答えから。

天然香水には、国内外で一つに統一された定義があるわけではありません。一般には、植物などから得られる天然香料を中心に調香した香水を指しますが、天然香料の配合率、抽出方法、合成香料や溶剤の扱いはブランドや製品によって異なります。「天然香水」という名前だけで決めず、原料、製法、表示、香り方、使い方まで確かめて選ぶことが大切です。

この整理は、IFRA(国際香粧品香料協会)による「natural」の定義に関する説明、ISO 9235:2021(天然芳香原料の用語規格)、日本化粧品工業会によるISO 16128の解説をもとにしています。出典はページ末尾の参考資料にまとめました。

No Single Recipe

天然香水には、一つの決まったレシピがありません。

「天然香水」と書かれていても、すべてが同じつくり方ではありません。

天然香料だけで構成されたものもあれば、天然香料を中心に合成香料を組み合わせたものもあります。香りを取り出す方法も、水蒸気蒸留、圧搾、溶剤抽出、低い温度帯での浸漬などさまざまです。肌につける香水、オイル、空間用の香りでも、処方や使い方は変わります。

だから最初に見るのは、「天然と書いてあるか」だけではなく、つくり手が何を天然と呼び、どこまで説明しているかです。

呼び方 一般に示していること 名前だけではわからないこと
天然香水 天然由来の香料を中心にした香水 天然香料の比率、合成香料の有無、抽出法
オーガニック香水 オーガニック原料や認証原料を特徴とする香水 製品全体の認証範囲、香料以外の成分、配合率
精油香水 精油を主な香りの素材に用いた香水 精油以外の香料、溶剤、濃度、肌への使用条件
ナチュラルフレグランス 自然由来の印象や原料を特徴とする香り 業界横断の統一基準、製品ごとの処方

これらの呼び方には重なりがあり、製品ごとの表示・説明を確認する必要があります。

Extraction

同じ花でも、取り出し方が変われば、香りの輪郭は変わります。

植物の香りは、花、葉、果皮、樹皮、根、樹脂など、それぞれ違う場所にあります。同じ植物でも、産地、収穫時期、乾燥の有無、抽出の方法によって、立ち上がりや奥行き、残り方が変わります。

水蒸気蒸留は、香りを精油として取り出す代表的な方法です。柑橘の果皮では圧搾が使われ、花や樹脂では別の抽出法が選ばれることもあります。どの方法が一律に優れているというより、素材の何を受け取りたいのかによって、選ぶ方法が変わります。

バリバリーが非加熱フレグランスを始めたのも、この問いからでした。成分を効率よく取り出すだけではなく、植物がもっていた揺らぎや、土地と時間の気配まで香りに残せないだろうか。そう考え、素材によっては5〜38度の「生命の温度帯」を大切にして香りを取り出しています。 → 非加熱フレグランスのこだわりを、くわしく

ラベンダーの香りを低温で移している製造の様子
素材の何を受け取りたいのかによって、香りの取り出し方を選んでいます。

7 Points

天然香水を選ぶ前に、確かめたい7つのこと。

1. 何を「天然」と呼んでいるか

植物、樹脂、動物性天然香料など、使われている素材を確認します。「天然由来成分配合」と「香料部分がすべて天然」では意味が異なります。

2. 原料がどこから来たか

産地、栽培者、採取方法、トレーサビリティが説明されているか。野生採取や動物由来素材では、自然環境や倫理への向き合い方も選ぶ理由になります。

3. どのように香りを取り出したか

蒸留、圧搾、溶剤抽出、浸漬など、抽出法によって残る香りが変わります。抽出方法を説明しているブランドは、素材との関係を判断しやすくなります。

4. ほかに何が入っているか

合成香料の有無だけでなく、アルコール、植物油、酸化防止剤など、製品を安定して使うための成分も確認します。合成か天然かの二択だけで、品質や安全性が決まるわけではありません。

5. どのように香るか

遠くまで強く香らせたいのか、近くで静かに変化する香りを楽しみたいのか。持続時間や拡散性を含め、自分が香りとどう過ごしたいかで選びます。

6. どこに、どう使う製品か

肌用、髪用、空間用、オイルなど、用途により使い方が異なります。商品ごとの説明を確認し、肌に使う場合は少量から試します。

7. つくり手が、香りを何のためにつくっているか

誰かによく見られるための香りか、自分を切り替えるための香りか、記憶や土地を残す香りか。同じ素材でも、つくり手の問いによって一本の香水の佇まいは変わります。

Safety

「天然だから、必ずやさしい」とは限らない。

天然の素材にも、使う量や体質によって刺激やアレルギー反応につながるものがあります。反対に、合成香料だから一律に危険というわけでもありません。

大切なのは、天然/合成という名前だけで安全性を決めるのではなく、使われている素材、濃度、用途、自分の体質を合わせて見ることです。初めて肌に使う香りは少量から試し、違和感があれば使用を中止してください。

参考:IFRAは、香料の安全性では天然由来か合成由来かだけでなく、使用量と曝露条件が重要だと説明しています。日本化粧品工業会も、ISO 16128に基づく自然・オーガニック指数は安全性や品質を規定するものではないとしています。

Bariberry's Answer

香りを足すより、自分の感覚が戻ってくる香りへ。

リベレーションブランド バリバリーは、天然龍涎香と植物の香りを用い、非加熱フレグランスの考え方で香りをつくる、日本の天然香水ブランドです。

バリバリーの出発点は、代表・吉田恭隆自身が、一般的な香水や強い香りを身体にまといにくかったことでした。誰かに好かれる香りを先に考えるのではなく、自分の身体が受け取れる素材を、一つずつ探すところから香りづくりが始まりました。

植物では、滋賀のハス、岐阜のラベンダー、自然栽培のローズ、開聞山麓の香料植物など、6軒の契約農家とつながり、育つ場所やつくり手との関係から素材を見ています。

製法では、植物が生きられる5〜38度の「生命の温度帯」を大切にして取り出した香りを、精油などと組み合わせています。すべての原料が非加熱という意味ではありません。蒸留された精油も含め、素材ごとに、その香りをどう受け取るかを考えて選んでいます。

そして、海を長く漂い、時間の中で香りへ変わる龍涎香。バリバリーでは、海岸に自然漂着したものを、有限会社アンバーグリスジャパンの知見をもとに確認して扱います。捕鯨由来の龍涎香は扱いません。 → 龍涎香を使った天然香水を、くわしく

つくりたいのは、強く自分を見せるための香りではなく、自分の中にすでにある感覚へ戻っていくための香りです。

素材の出自まで見る

天然龍涎香と、育てる人の顔が見える植物。

素材ごとに取り出し方を選ぶ

生命の温度帯を大切にした香りと、精油を組み合わせる。

外側ではなく、自分につながる

香りを自己表現の道具だけでなく、感覚へ戻る入口として扱う。

For You?

どんな人に合うか。

バリバリーの天然香水は、次のような香りを探している方に向いています。

強く遠くまで香らせるより、近くで静かに変化する香りを楽しみたい

香りの原料、産地、製法まで知って選びたい

植物だけでなく、龍涎香や樹脂など古くから使われてきた天然香料にも触れたい

誰かに見せるためより、自分の感覚に戻るために香りを使いたい

まずは説明ではなく、少量から実際に香りを確かめたい

一方、一般的な香水と同じ強い拡散性や、毎回まったく同じ均一な香りを求める場合は、方向が異なることがあります。天然素材は、収穫時期や熟成によって香りに小さな違いが生まれるためです。

First Three

初めての方に、この3本から。

香りの感じ方は、人によって大きく異なります。だからこそ、説明だけで決めず、いまの自分に近いテーマから、少量で試してみることを大切にしています。いずれも天然龍涎香を実際に配合した香りです。

絶望のオイル 30ml

絶望のオイル 30ml

税込13,200円・在庫あり

立ち止まりたい時に。天然龍涎香とイモーテル(ヘリクリサム)を中心に調香した、静かに自分へ寄り添うフレグランスオイルです。

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名前はまだない豊かさの循環フレグランス

名前はまだない豊かさの循環フレグランス【ホワイト古代龍涎香2nd】

税込5,500〜16,500円・在庫あり

受け取ることや、巡りを感じたい時に。古代ホワイト龍涎香、バニラ、ベチバー、パチュリ、ラベンダー、ベルガモット、スイートオレンジを組み合わせたフレグランスです。

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開花フレグランス

開花フレグランス(精油入り)10ml、30ml、ペンダントトップ【龍涎香/りゅうぜんこう】

税込8,800〜26,400円・全3種在庫あり

内側の感覚をひらきたい時に。ホワイト龍涎香とブラウン龍涎香に、ローズ、オリスルート、ベチバー、バニラ、トンカビーン、麝香を合わせたフレグランスです。

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まず少量から試したい方には、龍涎香のお試しセットもあります。

龍涎香官能フレグランス3本セット

龍涎香官能フレグランス3本セット

税込5,500円・各5ml×3本・在庫あり

豊かさの循環フレグランス、生命のフレグランス陰・陽——龍涎香を使った3つの香りを、5mlずつ試せるセットです。

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用途や場面から選びたい方は、天然香水のおすすめ(用途別の選び方)でくわしく紹介しています。

From the Maker

敏感な身体と、蓮の泥。

敏感な身体のこと

私の身体は、香りにかなり敏感です。先日、久しぶりに合成香料を少し嗅いだとき、「あら、いい匂い」と思ったのに、40分後には痒くなっていたことがありました。精油でも、痒くなるものは弾きます。濃度、検査の漏れ、元の植物の状態、私個人の特性——理由はいろいろ考えられます。

私が大丈夫だから皆さんも大丈夫、ということではありませんし、私に合わなくても、他の方にはまったく問題ないこともあります。ただ、バリバリーの香りは、言ってみれば炭鉱のカナリアのようなこの身体が、受け取れたものだけで、できています。

蓮の泥のこと

受け取っているのは、外の世界からの息吹だけではありません。

泥の中から咲く蓮の花は、悟りの象徴と言われています。泥の中からだからこそ、神聖な美しさの花が咲く。

これは私の調香にも現れています。自分の中のどろどろとしたものを、ないことにしないで、それを昇華させるように香りを創ってきました。泥を悪いものとして扱うのではなく、新しく咲く華の土壌なんだとみなして、日々を過ごしていく。泥も含めて、自分自身の存在に触れる瞬間を、大切にしています。

そうしたとき、触れる存在に、いいわるいや、優劣がないように。泥をないことにしないで、持ち続けた先に——瞑想で世界の見え方が変わるように——比較や優劣という次元を超えたものが、生まれてくる。

そんなふうに生まれた香りは、創り手の優劣なく、触れた人の深い部分に届く——そう感じています。

リベレーションブランド バリバリー代表 調香師・吉田恭隆

FAQ

よくある質問

天然香水には公的な定義がありますか?

「天然香水」という製品名について、すべての国・地域・ブランドに共通する一つの定義があるわけではありません。天然芳香原料や自然由来指数に関する国際規格はありますが、製品全体を一律に「天然香水」と認定するものではありません。原料、配合、抽出法、表示を製品ごとに確認することが大切です。

天然香水とオーガニック香水は同じですか?

同じとは限りません。天然香水は天然香料を中心にした香水を広く指す呼び方で、オーガニック香水は有機栽培原料や認証原料を特徴としていることがあります。どの原料・どの範囲がオーガニックなのかは製品ごとに確認が必要です。

天然香水は100%天然ですか?

製品によって異なります。「天然香水」という名前だけで、香料・溶剤を含む全成分が100%天然だとは判断できません。成分表示やブランドの説明を確認してください。

天然香水と精油は何が違いますか?

精油は植物から取り出した芳香原料の一つです。天然香水は、精油やその他の天然芳香原料を組み合わせ、肌や空間で香りの変化を楽しめるよう調香した製品を指します。

天然香水は香りが長持ちしないのですか?

使われる原料、濃度、肌や空間の状態により異なります。柑橘や葉の香りは比較的早く移ろい、樹脂、木、龍涎香のような素材は余韻を支えることがあります。強く長く残ることだけでなく、時間による変化も天然香水の楽しみ方です。

天然香水なら敏感な人にも必ず使えますか?

必ず使えるとは限りません。天然素材にも刺激やアレルギーの可能性があります。商品ごとの用途と注意事項を確認し、肌に使う場合は少量から試し、違和感がある場合は使用を中止してください。

バリバリーの香りは、すべて非加熱で作られていますか?

いいえ。バリバリーでは5〜38度の生命の温度帯を大切にして取り出した香りを使いますが、蒸留による精油なども配合しています。「すべての原料が非加熱」という意味ではありません。

バリバリーが使う龍涎香は天然ですか?

海岸に自然漂着した天然の龍涎香を扱います。生きたクジラから採取することはなく、捕鯨由来の龍涎香も扱いません。確認や品質判断は有限会社アンバーグリスジャパンの知見をもとに行います。

天然龍涎香とアンブロキサンは同じですか?

同じではありません。天然龍涎香は長い時間を海で過ごした複雑な天然素材です。アンブロキサンは龍涎香の香気に関係する主要分子の一つをもとに使われる合成香料です。現在の香水では、天然龍涎香そのものではなくアンブロキサンやアンバー調の香料が使われることも多くあります。

初めての天然香水は、どう選べばよいですか?

最初から説明だけで決めず、少量で試せるものを選ぶのがおすすめです。好きな香調だけでなく、香りを使いたい時間、強さ、肌に使うか空間で使うかも合わせて考えてください。

References

参考資料

いずれも2026年8月5日に内容を確認しました。
・IFRA, Definition of Natural(2025年1月20日):ifrafragrance.org(PDF)
・IFRA, Questions about fragrance:ifrafragrance.org
・ISO 9235:2021 Aromatic natural raw materials — Vocabulary:iso.org
・日本化粧品工業会「自然オーガニック指数表示」:jcia.org
・日本化粧品工業会「香り、匂い、臭い―化粧品と香料―」:jcia.org

Experience

まず、少量から香りに触れてみてください。

天然香水は、説明だけでは選びきれません。龍涎香と植物の香りから、いまの自分に合う一本を。まず一度、香りに触れてみてください。

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