“非加熱フレグランス”について説明します。
世の中の市場にある”香り製品”のほとんどは
香りの一部分を熱を加えたり
溶剤を用いて
“香りの一部分のみ”を抽出するものがメインとなっています。
非加熱フレグランスとは

非加熱フレグランスとは、フレグランスを作る過程で
意図的に熱を加えずない香りのことを言います。
ただ、実はその本質は「加熱しないこと」ではなく
もっと大きな背景があることを、皆様にお伝えできたらと思っています。
背景(ストーリー)について

私たち「人」が感覚を取り戻し、
その人自身の“そのまま”を世界で発揮できるようにという
祈りから来ています。これが非加熱フレグランスの背景(ストーリー)です。
この祈りがベースにあるからこそ、
植物にも、加熱を行っての
一部分の切り取りや過度な濃縮を強要していません。
素材を丸ごと静かに浸し、意識を向けてあげながらも
じっと待ちます。
そうすることで結果として、非加熱フレグランスを使う人もまた、
一部だけを誇張したり、無理に“強さ”を出したりしなくてよい
という在り方に変化していきます。
本記事では、定義・理念・方法・他手法との比較・受け取り方・倫理、ブランドの概要をまとめます。
1、定義と理念:なぜ「非加熱」なのか
定義
非加熱フレグランス(non-heated fragrance)とは、熱を加えずに素材の全体性(成分・気配・物語)を保ちながら抽出・調整する作法の総称です。低温域の維持・静置・時間の経過を基本に据えます。
理念
• 祈り・・・人が感覚を取り戻し、“そのまま”を世界に発揮できるように。
• 素材への敬意・・・植物や自然素材に切り取りや過度な濃縮を強要しない。
• やさしさの重視・・・より自然であることを重んじ、肌・呼吸に触れる際の微細な感覚を大切にする。
• 感覚の尊重・・・:自然であることを守るため、強さより調和/速さより熟成/効率より全体性を尊重。抽出の深さ・終了のタイミング・濾過の度合いもこの基準に照らして感性で決めていきます。
2、古代の再現:前近代の浸漬法と現代の再解釈

香りを作る際の蒸留法・合成法が普及する古代では、浸漬法はスタンダードな製法でした。
非加熱フレグランスは、この製法を尊重しつつ、現代の衛生・保存・記録の視点で再解釈し、求められるやさしい質感を丁寧に引き出す方法を整えました。
目指しているのは何かを矯正するような強い作用ではなく、全体性を尊んだような香りのやさしさです。
3、製法の全体像(whole-plant maceration)

非加熱フレグランスは、非加熱という点だけではなく
素材を砕いたり、一部分を切り取ったりするのではなく
できる限り丸ごと浸すことを行います。
これは単なる製法ではなく、素材そのものに一部分の切り取りや濃縮を強要しないという想いを込めています。
基本フロー
1. 原料選択:履歴・鮮度・倫理(希少資源は特に慎重に)。
2. 前処理:必要最小限の整え(粉砕は原則避ける)。
3. 容器・溶媒:プラスチックではなくガラスを推奨。目的に応じて選択(エタノール/オイル)。
4. 浸漬:常温〜低温で静置。撹拌は最小限に。
5. 観察と記録:色・香り・濁り・沈殿・日付を継続記録。
6. 濾過・清澄:段階的に行い、香りの“面”を削ぎ過ぎない。
7. 保存:遮光・低温・密閉。ロットと官能ノートを紐づけ。
3-1. 溶媒の考え方(品質基準を含む)
• エタノール:立ち上がり良好、香水設計に適合。
• オイル:肌なじみと持続。拡散より密やかな触れ方。
• 品質基準:エタノール・オイルともにオーガニック以上のグレードを推奨。
選択は誰に、どの場面で、どう触れてほしいかを起点に行う。
3-2. 時間・撹拌・濾過(過度を避ける)
• 時間:短期成果より長期の調和を心がける。
• 撹拌:最小限に留め、角を立てない。
• 濾過:濁りを欠点と断じない姿勢で、段階的に判断(濁りが質感として寄与する場合がある)。
4、他手法との比較:蒸留/CO₂/アンフルラージュ/一般的チンクチャー

非加熱フレグランスの製法は、成分を選別する方法ではなく
全体性を大切にする技術です。
これは、精製塩と天然塩の違いにも例えられ
精製塩は塩化ナトリウムのみを集めた塩になります。
その結果、体に良い影響を及ぼすはずの塩が、逆に体に負担をかけてしまうものと
なってしまっています。
天然塩は、塩化ナトリウム以外の微量なミネラル類も精製されずに含まれていることで
体を元気にしたり、健康を促すようなものとなります。
他法を否定せず、目的が違うために使い分けます。
・蒸留法、CO2抽出法との比較
| 蒸留・CO2 | 非加熱製法 | |
| 目的 | 成分の選択と強度 | 全体性の尊重 |
| 温度域 | 加熱・超臨界 | 常温〜低温 |
| 素材の扱い | 一部分 | 全体 |
・一般的なアンフラージュ(油脂に香りを吸着させる方法)やチンクチャーとの違い
| 一般的チンクチャー・アンフラージュ | 非加熱製法 | |
| 完成基準 | 数値 | 感性を活かす |
5、原料の選び方と倫理

その植物のストーリー(物語)と透明性を重視して原料を選んでいきます。
• 履歴:採取地・時期・保管・加工の記録
• 真贋:外観・履歴・必要に応じた第三者検証の組み合わせ
• 希少資源:龍涎香などは法規・生態系・文化への配慮を徹底
• 協働:小規模採取者・生産者へ敬意と正当な対価
6、受け取り方:撫でられるような香りを感じる

非加熱フレグランスは、鼻からだけではなく
皮膚感覚を整え、呼吸を整え、体の感覚を軽くします。
何かを矯正しようと強く働きかけるのではなく、そっとそばに寄り添い、
撫でられているような体感を感じられるように設計しています。
• 環境:静かな空間の中で香りの効果がよりわかりやすくなります
• 体感:背骨や肩の力みを抜くような優しさ
強制的に治すのではなく、必要な時に必要なサポートをします
7、非加熱フレグランスの設計

バリバリーでは、この基本の上にクリスタルの活用など独自の工夫を重ね、
非加熱フェアリーフレグランスとして確立していきました。
素材にも人にも一部の切り取りや過度な強要をしないよう
フレグランス創りの設計に落とし込んでいきます。
8、よくある質問(FAQ)
Q. 香りが弱く感じます。あまり効果がないのでしょうか?
A. 弱さ=力がないということではありません。
非加熱フレグランスは必要なときに、必要な働きかけや気づきを私たちに教えてくれます。
心が求めている時に、そっと丁寧に香ってみることをお勧めします。
Q. 敏感肌でも使えますか?
A. 原材料にはこだわりを持ち、自然栽培や無農薬のものを
オーガニックエタノールを使用しています。
ただ、体質で異なりますので、パッチテストを推奨し、体調不良時は気をつけてお使いください。
用語集(抜粋)
• 非加熱フレグランス(non-heated fragrance):加熱せず、素材と人の“そのまま”を守る作法。
• 全草浸漬(whole-plant maceration):素材を砕かずに丸ごと浸す基本手法。
• 面(plane):香りの触れ方・厚み・拡がりを示す感覚語。
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参考と検証の姿勢
本ページは情報提供を目的とし、医療・法的助言ではありません。体験の記述は体験であることを明確にし、科学的検証は方法と限界を示します。一次資料・学術情報・業界ガイドを参照し、誤りがあれば速やかに改訂します。







